第8章 お茶をどうぞ、お嬢様〜執事松〜
気 ま ず い。
たぶん下手に事実を述べても言い訳にしか聞こえないし…。
おそ松の未だに主張している忌々しい粗末な欲を切り刻んでやりたい。男の仕組みは未知の領域だけどアレってそんなに制御不能なの?
大体、お父様もお父様です。いくらお父様のご友人のご子息だからって、なんでこんなクズの成れの果てを纏めてうちのお屋敷で面倒見なきゃなんないの?こいつら執事なんて名ばかりでしてることといったら——
「あの、主様?」
「な、なぁに?」
私としたことが、こいつらへの不満が脳内を埋め尽くしてて、チョロ松の声が全く耳に入ってなかったわ。
「ですから、自称伯爵のイヤミ様が14時に主様に会いにいらっしゃるそうですがどうされます?」
「そう。イヤミが…」
(あの中年出っ歯。性懲りもなくまた私に会いたいなどと…!)
イヤミとは、一度お父様主催のダンスパーティーで出会って以来、しつこく私に付き纏う害虫のような男。数え切れないほど断ってるのにどうして察してくれないのか。
いつの間にかサイドテーブルに置かれていたミルクティーに口をつけ、透き通った声で言い放つ。
「なしで」
「かしこまりました。じゃあリスケしてトト子様とのお茶会をマストでプライオリティ高めで」
チョロ松は涼しい顔でサラサラっとスケジュール帳に万年筆を走らせた。
・・・