第11章 リクエスト作品 ハニーに首ったけ〜カラ松〜
2人で他愛のない会話をしながら魚を今か今かと待っているけど…
「あーまた餌食べられてる!」
全然釣れない。なんとなく魚の影は見えるんだけど、浮きが動いて竿を引くと餌が既に食べられている、の繰り返し。
「もうっ、無理だよこれ」
「貸してみろ」
いじけモードになった私の釣竿をカラ松は手に取り、慣れた手つきで針に練り餌をつけてくれた。
「ありがとう」
むくれ顔で釣竿を受け取ると、不意に顔を覗き込まれる。
「カラ松?」
「そんなに拗ねるな」
くしゃり、と私の頭を撫でる大きな手。
「そのうち釣れるさ」
低い声が心地よく耳に響く。
「うん。ねぇ、カラ松」
何気ない一瞬の仕草にいつも心を奪われる。
「なんだいハニー?」
「優しいね、カラ松って」
「ぇ…あ、そ、そうか?そうだろう優しいだろう!」
「うん!とっても優しい!」
カラ松はなぜか私に背を向けて小さくガッツポーズを取り、すぐにくるりと向き直った。
「……なぁ主、釣りは男のロマンなんだ。分かるか?」
「ロマン?」
「己の愛をしたためて、ただひたすら待つ!これぞまさに男のロマン!!」
「ふ、ふぅん?」
またよく分からないことを言っている。
「ロマンはいまいちよく分からないけど、連れてきてくれてありがと!」
「気に入ったならまた来るか?」
「うん!釣りしてるカラ松カッコいいからまた見たいし」
「ジーーザスッ!!」
刹那、カラ松は勢いよく立ち上がり、片足を椅子に乗せ顎に手を添えてポーズを決めた。
「カラ松っ!」
「カッコいいか?キマッてるか?」
「引いてるよ!」
「えぇっ!?」
カラ松が急いで竿を引いた時には魚はいなくなっていた。
呆然と水面を眺めるカラ松の、その横顔は哀愁漂っている。
なんて声をかけようか悩んでいると、
「あれ?主ちゃんとカラ松兄さん?」
「?」
声の方に目をやれば、私の彼氏と同じ顔があった。