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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第2章 出会い


 マルコの心の中になど、気づくはずもなく少女はベッドの横の水差しから、コップに水を注ぐと無邪気な笑顔とともに差し出した。
「ありがとうよい」
言葉ではそう言いつつも、身に染み付いた警戒心が水を口にするのを躊躇させる。
「・・・」
「お兄ちゃん?」
マルコから流れる微妙な雰囲気に、少女は首をかしげた時だった。
「心配しなくていい、ニューゲートの息子なら大事な客人だ」
その雰囲気を打ち破る突然の声に、マルコは目を見開いた。
黒い髪に理知的な眼差し。日に焼けた肌に、堂々たる体躯は独特の重厚感を放っていた。
「会うのは初めてだな、マルコ」
「!?」
「俺はロイ、モビーディック号の生みの親だ」
ニヤリと笑った笑顔は下手な海賊よりも遥かに迫力があった。
ゴクリと、思わず息を飲んだマルコの脳裏に白ひげの部屋にあるモビーディック号の精密な模型と、偉大なオヤジの声が蘇る。

『すげぇ・・・、親父、これモビーだろい?』
『あぁ?グラララ~、それはやらね~ぞ』
細い目をさらに細めて模型を見るマルコに、白ひげは
特徴的な笑いを交えながら言った。
『そ、そんなつもりはね~よい』
思わず焦るマルコに、白ひげはニヤリと笑った。
『そいつはな、世界一の船大工が作った、俺の“お守り”だ』
そう言った白ひげの瞳は嬉しそうに笑っていた。

「・・・オヤジの部屋に模型があったよい」
「お!ニューゲートの奴、捨てたとか言ってやがったくせに」
悪態をつくも、ロイは嬉しそうに笑った。
そこへ、柔らかい女の声が届いた。
「二人とも、その子はまだ完全に回復したわけじゃないのよ」
声の方向を振り向いたマルコは思わず、目を奪われた。
月光のような輝きを放つ銀の髪。
太陽を浴びた鮮やかな海のようなまっ青な瞳。
その瞳が優しく微笑んだ。
「初めまして、私はユエ」
そう言うと言葉を一旦区切り、微笑みがらロイの隣に立ち、少女の頭なでた。
「この人の妻で、この娘の母です、『沙羅ご挨拶して』」
最後の所は少女、沙羅と目線を合わせて囁くように紡がれた。
囁かれた少女は、ユエに少しだけばつが悪そうに笑った。
きっと挨拶もせずに話した事を恥じているのだろう。
「初めまして、沙羅と言います」
「マルコだい」
改めて挨拶された、マルコは柄にもなく挨拶を返した。
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