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狂気の傷痕【刀剣乱舞】

第8章 不安。


彼の欲を受け止めながら
背中に触れながらその胸板に
自分の頬をすり寄せた。


熱い汗ばんだ胸の奥から
どくん…どくん…と鼓動が鳴る。


『一期一振様…。』


呼びかけるでもなく呟けば
彼はか細い声で囁いた。


一期『刀解を、お願いします。』


びくっ…とその言葉に驚いた。


『嫌ですよ…絶対に。』


一期『なぜですか!貴女は…なぜ』


肩を抑え引き剥がし向かい合わせに
見下ろされながら睨まれた。


肩に触れる手は震えている。


『なぜっ…て、心では
そんな事…望んでないじゃないですか』


怒りの瞳から動揺のいろが見えた。


言葉を発さず私を見つめ続け
私は微笑みながら語りかけた。


『自分を…愛してあげてください』


貴女は何も悪くないのだから…
私が泣きそうになりながら呟く。


一期一振様は言葉を迷ってる。


『てか……一期一振様。』


貴方は愛されるべきなのです。


首を振って無理だと彼は否定する。
傷ついた心の笑みは残酷である。


一期『………貴女という人はっ』


絞り出された声は
今にも泣きそうな声で…


私はそんな彼に微笑んだ。


『生きて…生きて下さい…一期一振様。』


崩れてしまいそうな彼が
これ以上崩れてしまわぬように。


『貴方の罪は私が許します。』


ビクッと反応した一期一振様
ガバッと私をまた抱き締めた。


まるで確かめるかのように
抱きしめるその動作に私は
ここに居ますよと背中に触れる。


胸に頬を寄せればとくんとくん…
静かな鼓動が聞こえてくる。


『皆さん貴方の事を求めてますよ
貴方が心を殺してはなりません。』


何も悪くない貴方が自ら重い罪を
背負おうとして心を殺めるなんて
見ていられません。


一期『………っ』


『弟様たちの元へ帰りましょう?』


肩に触れる冷たい雫。


流れてゆく一粒また一粒の雫。


私は何も言わない
言葉は今、なにも必要ないから。


一期『ありがとう…ございますっ』


その言葉だけでもう、十分です


『皆さん、貴方を待ってますよ。』





貴方が一歩、前へ
踏み出せたという事だから。






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