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【イケメン戦国】燃ゆる華恋の乱

第4章  家康流、愛する人を甘やかす方法 / 徳川家康



「この前仕事で、市へ行く約束が流れたでしょ。 今日たまたまいつもの反物屋に行ったら、店主が寂しがってた」

「え、わざわざ行ってくれたの?」

「だから、たまたま」



(嘘)


本当は、舞に渡す布を買うために反物屋へ行った。
なんでこんな事も言えないんだろう。



「これで、俺の羽織を作ってくれないかな。 いつでもいいから」



これが、今日舞に会いに来た本当の理由。


まぁ、それは建前で、本音は違うのだけど。


舞にこれで羽織を作ってもらう。
舞の事だから、すごい丁寧に仕事をして、とても良い物を作るだろう。


そうすれば、褒める口実が出来る。
『良い物を作ってくれて、ありがとう』と。
甘やかす事もできる。


素直に甘やかす理由が欲しかった。
本当は何も無くても甘やかしたいのだけど。
理由を付けなきゃ、気恥しくて……





家康は、舞がはにかんで『うん』と言うのを待っていた。
しかし、舞の口から出た返事は、全く想像していないものだった。




「ごめん、出来ない…」





(え……?)

その言葉にちょっと面食らって舞を見ると、舞は何故か苦しそうに顔を歪めていた。


(舞……?)




「なんで」
「ごめん、理由はちょっと言えないんだけど……実は今、針子の仕事を休んでいて」


え、だってさっき。


「針子の仕事が忙しいんじゃなかったの」
「ごめん、嘘ついた……忙しいのは本当だけど」
「じゃあ、なんで忙しいの」
「……」



舞は口ごもってしまった。
なにそれ、納得いかない。

家康はちょっと苛ついて、心にも無い事を口走った。



「もしかして、他の男とでも会ってたの」



言ってすぐに、家康は口元を押さえた。
しまった、何を言っているんだろう。
舞に限って、そんな事ある訳ないのに。


しかし、当の舞は。



「……」

目を逸らし、小刻みに身体を震わせたまま、何も言わない。
顔が真っ青に青ざめていて……


(まさか、本当に他の男と……?)


家康の心に、良からぬ不安が影を見せた。


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