第4章 家康流、愛する人を甘やかす方法 / 徳川家康
「まぁ、俺も結構仕事に追いまくられていたから……。 顔も出せずに、ごめん」
「家康が謝る事じゃないよ、私こそお城に訪ねて行けなくて、ごめんね」
実際。
ものすごい量の仕事に追いまくられ、ろくすっぽ寝ていない。
今日だって、ほとんど無理くり時間を作ったようなものだし。
いつもなら、少しでも時間があれば、舞は自分を訪ねて来てくれていた。
それが無かったと言う事は、舞自身もものすごく忙しかったのだろう。
「忙しそうだから、手短に話す。 これを渡しにきた」
疲れてないか、体調は大丈夫なのか、ちゃんと眠れてるか。
いくらでも話す材料はあるのに、筋金入りの天の邪鬼な性格は、それを許してくれない。
家康は舞の目の前で、ふわっと反物を広げて見せた。
「わぁ、素敵な布地だね!」
舞が目を輝かせ、布に魅入る。
複雑に織り込まれた辛子色の布地は、太陽の光に当たって艶々と輝いた。