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マカロン

第2章 プロローグ


―コンコンコン

「玲奈お嬢様。少しよろしいでしょうか」

男性にしては少し高い中世的な優しい声が響いた。

「悠真?」

「はい。少しお嬢様に話したいことがございまして」

日比野悠真。私がこの家で一番の信頼を置いている執事。

「ちょっと…待って」

この顔はさすがに見せられない。

「また…ですか。声がかすれています。相談ならいつでもお聞きしますよ」

ドアの向こうから優しい声が聞こえる。

それから1分くらい無言が続いた。

「入って、いいよ」

ドアが開いてティーセットを持った悠真が入ってくる。

「ちょうど、いい具合に抽出できたころです。さあ、お茶でもしながら話しましょう」

こういうの、ほんとずるい。好みの紅茶を大好きなマカロンと一緒に持ってくるなんて。

「さて、私の話したいことから話しましょうか。それともお嬢様の相談に乗りましょうか」

「悠真話して」

「はいはい。それでは私が話したいことから」

「お嬢様。高等部の雪生に進学したいのですよね?」

「そうね」

「今日奥様に相談されてましたが、恐らく結果はダメだったのでしょう。旦那様もまともに取り合ってくださるとは思いませんし…」

「うん…」

「そこで、私から提案があるのです。お嬢様の相談もそのあたりかとは思いますし」

すごくずるい。お菓子の次は私に提案だと。何、全部お見通しってこと?

「どんな提案?」

「私、実は鳳学園の雪生の卒業生でして」

「え、知らなかった」

「まあ、言ってませんでしたから」

もっと早く知っておきたかったんですけど。その情報。

「それと、同期で今雪生を教えている三枝という友人がいまして。彼は教えるのがすごくうまいのです。そこで、私から
彼に頼んでおいて、お嬢様が勉強できるようにし、家では私が教えられるだけ教えてはどうかと思いまして」

早く言ってほしかった、それを。

「これは、奥様も旦那様もお嬢様の意見を一切聞き入れようといなかった時の最終手段だったのですが。どうでしょう?」

聞き入れてもらえてないんだから、最終手段使うしかないでしょ。

「おねがい、してもいい?」

「もちろんです」

こうして、私の受験への道が拓けていった。
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