第24章 甘く冷たい宅急便──悪夢
その日の夜。私と昴さん、桂羅兄でご飯を食べた。
お風呂に入り髪も乾かし、明日に備えてさて寝ようとベッドに入る。
「……明日からぎゅうぎゅう詰めだな」
明日は早朝から映画の撮影、ライブにCDのお披露目、バラエティ番組の出演etc……。とにかくスケジュールがキツキツなのだ。
「えっと明日は……珠希さん5時半に迎え来るとか言ってたな……」
その時間には支度が終わるように目覚まし時計をセットする。
「さて……寝よ」
私は目を瞑り、布団に潜った。
静かに深い眠りに落ちて行くと、静止画が私の頭の中にくるくると回っていった。
『何で……パパを殺すの?』
『何でって?瀬里奈を泣かせたんだよ?お前を傷付ける奴は殺すに決まってるだろ』
乾いた銃声の音。私を抱きしめるママの香りに混じる、血の匂い。
私はそこで飛び起きた。
「ハァッ、ハッ、ハ……」
私の体は無意識にカタカタと震えていた。
──怖い。
私はコンコンッと昴さんの部屋をノックした。
「はい……?」
「昴さん?瀬里奈です」
そう言うと、すぐにドアが開いた。
「どうした……?」
「……少しだけ、部屋にいてもいいですか」
私のただならぬ様子に、昴さんは何かを察してくれたらしい。すぐに部屋に通してくれた。
「何かあったのか?」
昴さん──いや、赤井さんはラム酒を垂らしたホットミルクを持って来てくれた。本人はバーボンをロックで飲んでいる。
私はミルクの入ったマグカップを傾けながらベッドに三角座りをした。
「……怖い夢、見た」
「夢?」
赤井さんが怪訝な顔をする。
私はこくりと頷いた。
「昔の……嫌な夢。それで怖くなって……」
「だがお前、明日は朝早いんじゃなかったか?」
「そうですけど……部屋だと怖くて寝られないから……」
そう言うと、赤井さんは私の顔を覗き込んで言った。
「なら……一緒に寝るか?」
「……え」
私は少し身じろいだ。だけど赤井さんは部屋を出て行き、どこからか目覚まし時計を持って来た。
「え、それ私の……」
「セットはしてあるようだな。さて、寝るか……」
「え、ちょっ……」
有無を言わさずベッドに連行される。
「おやすみ」そう言われたら寝るしかないじゃないか!! ←