第21章 密室にいるコナン、謎解きするバーボン
「そういえば真知さんも同じようなことを言っていましたよね?」
横溝警部が真知さんにそう尋ねる。
真知さんはこくりと頷いた。
「ええ……。私も足の指先が涼しかったから……てっきり石栗君がクーラーをかけてるんだと思ったけど……」
だが、琴音さんや高梨さんが部屋に行った時はそのことに気づかなったらしい。
高梨さんに至ってはコナン君が寝てるかもって思ったため、早めに引き上げてしまったらしい。
「なるほど……やっと犯人が分かったよ……」
小五郎さんがニヤッと笑った。
「え?」と横溝警部がびっくりしたような顔をする。
「まずドライアイスがあったことを裏付けるような証言をした真知さんは……容疑者から外していいでしょう……。眼鏡のボウズが石栗さんの部屋にいたことを知っていた高梨さんもしかり……。子供が寝てるそばで殺人をやらかす奴はまず、いませんからね……。
となると残るは、その2人よりも先に石栗さんの部屋に行き……氷やドライアイスが溶ける時間を充分に稼げた……桃園琴音さん……あなた以外に犯人は考えられませんなァ!」
“眠りのポーズをしない小五郎さん”というのは身内には違和感バリバリらしく、横溝警部は本気で心配していた。
琴音さんのやった犯行手順はこう。
まず、冷やし中華を作っていた最中にくすねておいた氷をポケットに忍ばせ、『石栗君がお昼本当に食べないか聞いてくるわ……』とでも言って彼の部屋に行った。
そして石栗さんを扉のそばで撲殺した後、凶器の花瓶に氷を詰めて棚に置き……部屋を出て先ほどのトリックを仕掛け、石栗さんの死体が扉を塞ぐようにズラしたというわけだ。
だがそこにはコナン君が寝ており、彼女はそれを知らないまま犯行を実行してしまったのだ。
そしてキッチンに戻った琴音さんは、『やっぱり彼、冷やし中華食べないみたい……』と嘯き、何食わぬ顔で食事して密室殺人を完成させたのだ。
小五郎さんがそう話すと、真知さんと高梨さんが反論した。
「じゃあ合鍵はどこにあるのよ?」
「鍵、かかってただろ!?石栗の部屋!」
小五郎さんが口ごもると、待ってましたと言わんばかりにコナン君が「そうそう氷ってさー……」と声を上げた。
「こ……氷って……?」
全員の目がコナン君に向く。