第4章 物語の始まりへ
それからまたしばらくした頃。
朝、私が起きてリビングへ降りると──「誰!?」見知らぬ男女がキッチンで平然と食事を摂っていた。1人は小太りの女で、もう1人は仮面で顔を隠していた。
「やぁねぇ、私たちはあなたの両親でしょう?」
「そうだぞ瀬里奈。せっかく父さんたちが来たんだから」
あーうん、なんか分かっちゃった。……アホらし。
「なーんちゃって。気づいてるわよ、お父さんとお母さんでしょ?変装してるけど」
「あらつまんない。バレちゃったの?」
小太りの女が変装を解いた。私が知っているいつものお母さんに戻る。男も仮面を取り外してニッと笑う。やっぱりお父さんだ。
「で?わざわざ悪ふざけしてまで私の所に来たってことは何かあるんでしょ?何か用なの?」
私が不機嫌を隠さずに言うと、お母さんが少し慌てたように言った。
「そうなのよ瀬里ちゃん。……アメリカ行かない?もちろん新ちゃんも一緒に」
「やーよ」
「即答だな……」
お父さんが呆れたような声を出した。私は当たり前のように言った。
「当たり前でしょ?私はそこまで危険じゃないもの。そりゃあ……たまに事件に首突っ込んじゃったりしてるけどさ……」
「本当の本当に平気なの?」
お母さんが心配そうに念を押してくる。私は不敵に笑った。
「2人のことだから、新一の関わってる組織に私も関わってるんじゃないかって思ってるんでしょ?平気よ!少しぐらいなら私が対処できるしさ!」
「でも……」
お母さんが食い下がろうとするが、お父さんがそれを止めた。
「いいじゃないか、瀬里奈がそう言っているんだから」
「ありがとうお父さん。──ね、お母さん。だから平気だよ!」
私がそう言うと、お母さんは「なら……」と引き下がってくれた。
「でも新一の気持ちは聞いていないから、彼を連れて行くかどうかは──」
「新一の気持ちを聞いてからってことでしょ?それは構わないよ」
そう言うと両親は安心したのかホッとしたように笑った。だが──
「……分かったわ。でもその代わり──」
お母さんに洗面台に連れて行かれ、変装までさせられた。そして新一に悪ふざけを企み、彼を外国に連れて行こうという計画に無理やり参加させられたのである。
もちろん新一は日本に残っていたいと言ったため、そのままなのだが。