第4章 物語の始まりへ
「あれ、お姉さん!ここにいたんですね」
「蘭ちゃん。ごめんね、新一まだ帰ってきてなくて……」
「あれ、でも玄関に新一の靴ありましたけど?」
はぁぁぁぁぁ〜!?
(ちょっ、なんで新一の靴あるんですか博士!?)
(新一の服じゃったんだから当然じゃろ!)
(もー新一のバカ!)
そんな会話を目で交わした後、私はお母さん譲りの演技力で、
「そうなんだ?私ここでいろんな人に電話してたから……。でも新一ここにきてないのよね……。とにかく、新一見つけたら蘭ちゃんに連絡するよ。ね、もう遅いし帰った方が……」
「だったら私も捜します!」
そうなるよねー!だって蘭ちゃんいい子だもん!
どうやって蘭ちゃんを帰そうかと私と博士で画策していると──
ゴッチン!
(バカ新一!)
(何しとるんじゃ!?)
どうやら新一は机に頭をぶつけたらしい。その音で蘭ちゃんは余計に帰ろうとはしなくなった。
「何今の音……?」
「さ、さあー?とにかく蘭ちゃんは帰った方がいいって!ね!」
だが私の必死の抵抗も虚しく、蘭ちゃんは机の陰に隠れていた新一を見つけてしまった。
「この子……」
バレる!?バレちゃうかなぁこれ!?
「可愛い〜♡」
よかった、蘭ちゃんが天然で本当によかった。
博士が新一を『遠い親戚』として紹介した。両親が事故で入院しており、博士が預かっているということにした。が、問題は名前のことである。
蘭ちゃんに名前を訊かれた新一は咄嗟に『江戸川コナン』と名乗った。
「あ、そーだ蘭ちゃん。この子蘭ちゃん家で預かってもらえない?」
そう言うと新一 ──コナン君はぎょっとした顔をした。
「構いませんけど、父に聞いてみないと……」
「本当?助かる、ありがと!」
と、コナン君が私の髪をくいくいと引っ張った。コナン君に連れられるがまま書斎から引っ張り出される。
「オメーどういうつもりだよ!?よりによって蘭の家なんて……!」
「考えてみなさいよ名探偵さん。蘭ちゃんの家は探偵事務所よ?そこで事件を解決していけば、黒ずくめの奴らに近づけるかもしれないでしょ?」
そこまで説明するとコナン君はやっと理解したらしい。
「どうしたんですかお姉さん?」
「ボク、お姉ちゃん家がいいー!」
コナン君はあざとく蘭にくっついた。この手の甘えは蘭にはてきめんに効果がある。