第16章 映画編・迷宮の十字路 〜後編〜
──第三者side
山能寺、早朝。
「本当に面目ない。仏像の在り処を突き止めることが出来なくて……」
小五郎が円海にそう謝った。
「いえいえ、これも仏様のお決めになったことじゃ、気にすることはありません……」
「どうぞ皆さん、お気をつけて……」
竜円がお辞儀をしたのに合わせ、小五郎達5人もお辞儀をした。
「さよなら」とコナンが手を振る。
円海と竜円は本堂に戻っていた。
「そやけど、困りましたなぁ……ご開帳まで、あと1時間しかあらしません……」
「何、ありのままを見せたらええんや……」
そう言いつつ、円海と竜円は秘仏が入っている扉を開けた。すると──
「や、薬師如来様が……お帰りになってはります!!」
平次の帽子を被った薬師如来像があった。
その理由は遡ること数時間前。
鞍馬山の玉龍寺でのことだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
平次が玉龍寺の鐘楼の中、屋根裏の板を外していた。そこにあったのは──
「おお!あったで工藤!」
例の薬師如来。同じく鐘楼の中にいたコナンがニヤリと笑う。
「な?オレの言った通りだったろ?」
──実は寺の形自体が“玉”という漢字になっていたのだ。そしてその玉の“点”部分に当たる鐘楼に、仏像が隠してあったのだ。
「流石のオレも気ーつかへんかったわ……」
「“玉”にうかんむりを付けると、“宝”になるだろ?うかんむりは屋根を示してたんだ……」
「なるほどなぁ……」
そう言いながら、平次はポケットから水晶玉を出した。そしてそれを薬師如来の額にはめる。
「これで、元通りや……」
「ああ……」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あの2人、ええコンビやったなァ……」
円海が平次の帽子を薬師如来から外しながら言った。
「義経と弁慶みたいやった」
「はぁ……?服部少年と毛利名探偵のことですか?」
竜円がそういうと、円海はその帽子を被りながら言った。
「まだまだ、修行が足りんみたいやなァ……」
笑いながらそう言った。