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境界線。【安室透夢小説】

第10章 問.月が綺麗ですね。




「ほら、車の中でもお話したでしょう?私のことを好きな人はみんな大好きって。だから、逆に言えば私のこと嫌いな人のことはたとえ家族であろうと興味が湧かないんです。」

「.....両親を殺された時もなにも感じなかったんですか?」

「感じましたよ。正確に言えば殺された後ですかね?....母が動かなくなった後初めて母に抱きついて、母の手を使って頭を撫でました。その後、初めて父の膝の上に座りました。私が近くにいっても怒らなかった。....体は冷たかったけどとても暖かく感じました。だから、その部屋で両親と1週間一緒に過ごすのは別に苦じゃありませんでした。」

「.....その1週間、犯人は?」

「同じ部屋にいましたよ?両親を殺した後『人は呼ぶな。お前は俺とここにいろっ』って今思えば、それは脅しで人質として監禁されてたんですよね。でもあの時は、あぁ、この人は私を必要としてくれてるって。思っちゃって。本当は怖い人のはずなのに、今考えても別にあの人のとこ怖いとか思えないんですよね。......やっぱり、どこかで歪んじゃったんですね。心。安室さんも気持ち悪いと思いますか?私のこと嫌いになります?」

そう言って くのえさんが振り返る。
真っ直ぐに見つめてくる くのえさんと目が合う。

「.....あの時、きっと目暮は私のこと気味悪がってました。一瞬だけどそんな目をしてました。だから、私は目暮のことは嫌いでした。今回の件で、ちょっとだけ好きになりましたけど。」

くのえさんは俺から目を離さない。
きっと答えを待っているんだろう。

「 くのえさんのこと、嫌いになんたらなるわけありませんよ。....少し驚きはしましたけど。」


くのえさんのことを気持ち悪いだなんて思わないし、嫌いにもなるはずがない。

「そうですか、良かった。」

そう言って くのえさんはまた正面を向いた。

「....もう一つだけいいですか。如月知佳にあれほど愛情を注いでいたのは幼少期の自分と重なったからですか?」


「ふふ。違いますよ。きっとあの子が本当にただ家出しただけの少年だとしても可愛がっていたと思いますよ。私、子供大好きですから。」

そう言って くのえさんは立ち上がる。

「もう。顔見られても大丈夫です。お膝、お邪魔しました。」

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