第6章 第六章
もぐもぐと口を動かす私に乱ちゃんは嬉しそうに目を細めていた、隣で薬研くんも卵焼きに手を伸ばし口に入れる。
「美味いな…」
「本当に?良かった…」
「えっ、もしかして…あるじさんが作ったの?」
乱ちゃんが私に問う。私は手のひらを首の後ろへ回して少し照れながらに小さく頷けば、ざわりと刀剣男士達の目の色が変わった気がした。乱ちゃんは興奮気味に聞いて来る、とてもグイグイ攻められて少し身を引いてしまい苦笑いする。
「ちなみに他にはなにを!?」
「えっ、えっと…卵焼きと目玉焼き、後はスクランブルエッグ…その黄色でぷるぷるしているモノかな?」
多分スクランブルエッグを知らないと思ったから説明し言えば、シュンッと食べ物が減った。ぱちぱちと何度も瞬きしてしまう。いつの間にか目玉焼きや卵焼きと見えない早さで消えて行った。
「えっ、あの…」
「これはまた笑えるな」
「一体皆さんはなにを…」
私が薬研くんに聞くと、卵焼きが箸と箸に握られてピタリと止まった。冷ややかな視線を送りつつ笑っているけれど目が笑っていない一期さんと、主命とあらばといつも考えている仏頂面の長谷部さんであった。いやいや…なにやってんの。
「これは主殿が私に作って下さったモノです。へし切長谷部殿…手を離しては下さいませぬか?」
「なにを言うかと思えば、これは主が俺の為に作った卵焼きだ…貴様こそ手を離したらどうだ?」
「おやおや、これはまた世迷言ですな…」
「ほぅ…主に刀を向け怪我を負わせたというのに、一体どう言う風の吹き回しだ?言っておくが主は俺を近侍として外さないように見えるからな…」
「それでは私も言っておきますが、私は主殿に忠義を誓わせて貰った…そして主殿からも返事を頂いている。近侍になるのも近いだろうな…」
修羅場か、なんだこれ…不毛な争いに引くしかない。しかし誰も止める刀はおらず、寧ろ乗り気であり手合わせで決着を付ければ?という野次まで飛んで来る始末であった。そんな時、薬研くんは私の方を向いて目を細める。
「大将…本当に卵焼きが美味い」
「あはは…うん、ありがとう…でも意外だったでしょう?重いかも知れないけれど…花嫁修業見たいな、ねっ?一緒に同棲していた時もあったから…」
「いや、俺っちはいいと思うぜ?大将見たいな気立てのいい女が嫁さんなら、寧ろ自慢したいくらいだしな?」
「やっ…薬研くん!」