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幸せになりたい!『刀剣乱舞』

第4章 第四章


明石さんは私を見下ろすとニタリと微笑んだ。そのまま竹のベンチに腰掛けていた私を挟み壁に手を付いており、アゴを持ち上げられる。彼の長く滑らかな人差し指で私の唇を触れて撫でた。あっ…とても嫌な予感がする。

「主はんの唇なんてどうやろうなぁー…」
「それは結局、私が損するだけなのでは?」
「あははっ…バレてしもたか」
「普通に考えてバレないと思える方が可笑しいですよ…後、こういう行為は好きな人にして下さい」
「主はんはまだ未練がましく元の恋仲である男を好いとるんですもんねぇー…」
「!…えぇ、そうですね。馬鹿見たいに好きでした。いえ…今もまだ好きです」

私の言葉に明石さんは人差し指を唇から離した。同情ともとれるような儚げな瞳で見下ろして「ほんま、阿呆ですわ…」と呟いていた。私も苦笑いを浮かべてから視線に耐え切れず明石さんから視線を反らす。ほんの一瞬私が傷付いた顔をしたのを彼は見逃さなかった、明石さんはのんびりとした口調で私の頭をポンポンと優しく撫でてくれた。

「ちゃいます、主はんの事やない…寧ろ主はんはえぇ女や。そないに一途に想うてくれとる女を振るような男を阿呆や言うたんです」
「!…明石、さん…」
「はぁ。ほんまに羨ましいですわー…自分なら一途に想われたいし愛されたいとか思うけどなぁ」

ポンポンと頭を軽く叩き撫で回す彼に胸の奥がじんわりと暖かく広がって行く。うつむく私に明石さんは言葉を続けた。

「自信持ち、主はんはえぇ女や…」
「……明石さん、どうしよう」
「なんですん?」
「格好良過ぎて惚れそうなんですが…」
「主はん、言うたそばから乗り換えるのはなしと違います?まぁ…自分を好いてくれるのはありがたい事ですけど、自分にとって蛍丸がずっと一番やもんでどう頑張っても二番目ですなぁ…」
「うーん…それなら止めておきます」

私が簡単に引き下がり笑った為か、明石さんはきょとんとした表情をしてから可笑しそうに笑った。潤んだ瞳をなんとかしようと指先で目頭に触れて見る、その時頬に涙が伝った。乱暴に頬を撫でようとすれば、私の手首を優しく掴んだ明石さんが私の頬を舌でぺろりと舐め取ったのである。彼は妖艶に微笑みニタリとした笑顔で私からゆっくり離れて、私のぽかんとした表情に目もくれずに耳元で囁いて去って行く。

「なに…今の…」

彼の後ろ姿を見て私の涙は今の出来事で止まった。
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