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【HQ】君に好きだと言えたなら

第5章 こぼれ落ちる(潜尚保×白布姉同僚)


 お母さんに言われた物を買い終え、袋に詰めると、それは大きな袋二袋分にもなって、結構重かったんだけど、尚保はその二つの袋を軽々と持った。年下だけど、ちゃんと男の子なんだな。昔一緒に買い物に行った時は私が全部持ってたのに。


「尚保、一つ持つよ。」
「大丈夫。荷物持ちとしてついて来たんだから、これ位持つよ。」
「そう?」


 尚保の言葉に甘え、私は先程スーパーで購入したアイスの袋を開け、それを食べながら歩いた。


「ねえ、ゆりちゃん。今の彼氏と結婚するの?」
「しないよ。」
「…なんで?」
「取り敢えず付き合ってるだけだから。もっと稼ぎのいい男じゃないと結婚したくないし。」
「…俺がさ、大人になって、稼ぎのいい仕事に就いたらゆりちゃんは俺と結婚してくれる?」
「はあ?何言ってんの?私年下とか無理だから。」


 突然尚保の口から出てきた〝結婚〟という言葉にドキッとした。私からしてみればとてつもなく驚きの発言だって言うのに、相変わらず無表情の尚保。何考えてるかほんっと分かりずらい。


「尚保はさ、背高いし、スポーツ出来るし、頭も悪くない。同年代の女の子からモテるでしょ?もう少しにこっと笑いでもすれば女子高生なんてイチコロだと思うよ。まあ、尚保が笑ってる所とか想像出来ないけど。」
「ゆりちゃんは笑ってる人の方が好み、なの?」
「私?私はクールな人の方が好きかな。」
「なら俺は今のままでいい。」
「あのさ尚保。さっきから何なの?まるで、」


 私に気があるみたいな言い方、やめてよね。そう言おうと思ったのに、あまりにも尚保の目が真剣過ぎて、言おうとした言葉は喉の奥につっかえた。


「あ。」


 炎天下の中で食べるアイスは形を歪な物へと変え、それが棒から溶けて落ちようとした時、尚保がそれをパクリと食べた。


「…マズい。」


 新発売のガリガリ君のコーンポタージュ味。人のアイスを勝手に奪っといてマズいとはなんだ。


「ゆりちゃんこれ好きなの?」
「え?あ、うん。」
「じゃあ俺も好きになる。」


 少しだけ笑ってみせた尚保に好きの気持ちがどんどん溢れていくような気がした。

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