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【HQ】君に好きだと言えたなら

第1章 キスから始まる恋の話(牛島若利×白布姉)


「今の何?賢二郎じゃあなたにトスをあげるには力不足って事?」
「初対面のあなたに叩かれる事をしたような覚えはないが。」
「賢二郎の姉、白布奈緒子。
あなたにトスをあげるのには賢二郎じゃダメだって風に聞こえたんだけど。自分に尽くしてくれるセッターよりも、才能あるセッターの方が好みな訳?」


 彼が何か言おうと口を開いた瞬間、賢二郎に名前を呼ばれた。牛島君と私が一緒にいると気付くと、慌てて私達の方へと駆け寄ってきた。どうしたのかと尋ねる弟に、何でもないと答えた。賢二郎が来たことで、牛島君の口から私の質問に対する答えを貰うことが出来なかった。


 それが、去年の秋の話。
 そして、年が明け、三月の末の事。


「隣に越して来ました牛島です。」
「なんで、牛島君が、」


 驚く私を他所に、牛島君は首を傾げた。


「白布奈緒子!春高予選の時に会ったことあるでしょう!」


 そういうと、思い出したのか、ああと、納得したようだった。


「なんでここに。」
「東京の大学に進学したからだ。」


 上京したからといって、なんで、よりによって私の住んでるアパートの、しかも隣!世間は狭いなんて言うけど、狭過ぎる。


「言っとくけど、私アンタの事嫌いだから、極力関わりたくないから。」
「奈緒子に嫌われるような事をした覚えはないが。」
「なんでいきなり呼び捨てなのよ!」
「白布と呼べばわかりにくいだろう。」


 弟と被るからっていうのは、まあわかるけど、だからって、年上の人を突然名前で、しかも呼び捨てで呼ぶか?普通。


「もう、なんでもいいや。挨拶済んだでしょ。さっさと帰って。」


 そう言うと牛島君はつまらない物ですがと、お決まりの挨拶の言葉を並べ、手土産を渡してくれた。それを受け取らない訳にもいかないので、とりあえず礼儀として、御礼を言ってその手土産を受け取り、ドアを閉めた。
 これから毎日牛島君と会うかもしれない。そう思うと気が重かった。

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