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【HQ】君に好きだと言えたなら

第1章 キスから始まる恋の話(牛島若利×白布姉)


 そのまま、誰かの胸に私は抱かれた。顔を上げると、その相手が牛島君だと分かった。


「え?なんで?」


 驚く私をよそに、牛島君はいつも通り極めて冷静で、遅かったからロードワークのついでに迎えに来たと。ロードワークって、まさか、ここまで走ってきたの?流石元白鳥沢の大エース。体力半端ない。


「な、なんだ君は!」


 上司の声にハッとした。牛島君が走ってここまで迎えに来たことに驚き、一瞬上司の存在を忘れていた。さっきまで自信たっぷりだった上司の姿はどこへやら。突如現れた牛島君に驚いて、声が裏返っている。牛島君、背が高いし、がたいもいいし、驚く気持ちも分かる。


「だから、待ってる人がいるって言ったじゃないですか!」
「でも、彼氏はいないって、彼氏が欲しいって話してたじゃないか!」


 ええ、確かに言いました。同僚に。あなたに言った覚えはありません。会話を盗み聞きするなんてほんとに気持ち悪い。
 慌てふためく上司と、それに向かって声を荒らげる私。牛島君は状況が理解出来てないのか、ただ黙って私達のやり取りを見てる。


「どうせ弟とかだっていうオチだろ!白布さん、弟がいるって言ってたもんな!ほら、だってそのTシャツ、N大のだろう!学生が恋人なんて、そんないい歳して有り得ないだろう!」


 いい歳してって失礼な。一応まだ二十代前半だし。ていうか、自分の事は棚に上げてなんて奴だ。お前は一回りも年下の私に手を出そうとしてるくせに!てか、アンタに弟がいるなんて話したことないし!


「プライベートの事まで口出ししないで下さい。私が誰と付き合おうが私の自由じゃないですか!」
「白布さんには、年下なんて合わないよ。君には年上の知的な男性こそが相応しい。」


 知的な男性とは自分の事を言ってるのだろうか。イケメンなわけでも、仕事が出来るわけでも、性格がいいわけでも、人望が厚いわけでもないのに、その自信は一体何処から湧いてくるのか。言葉を返せば、斜め上の返答が返ってきて、話にならない。一応上司である訳だから今後の仕事に差し支えるような事はしたくないから、私が冷静であるうちに帰って欲しい。じゃないと、本音が口から出てしまいそうだ。だが、上司は諦めるどころかヒートアップ。


「奈緒子。」


 牛島君に名前を呼ばれ、振り向くと、牛島君の唇が私の唇に重なった。


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