第1章 楽しまなければ損損♪
布団から顔を半分だけ出して、空気の冷たさを感じていた。
月海はだいぶ前に目がさめていたが、布団から出られずにいた。
新前主として本丸に来たのは夏の終わりの事だった。
エアコンが無い部屋で暑くて死にそうだったのを思い出す。
月海「今度は寒さかい!」
布団の中でぼそぼそ文句を言う。
工事が追い付かないとかで遅れている訳だが、昨日までのぽかぽか陽気では気にならなかったのに…
今朝は急激に冷えていた。
いつもなら、起きて光忠の朝ご飯の準備を手伝っている時間だ。
目線だけを動かして洋服箪笥を見る。
さっきチラッと布団をめくって服を取りに行こうとしたが挫折していた。
月海「タンス遠い…。無駄に広いこの部屋…。」
せめて着替えられればなぁ〜と思っていると、廊下を近づいてくる足音がした。
足音は部屋の前で止まり、トントンと襖を叩く音がした。
「起きてるかい?」
声で分かる。
光忠だ。
月海「起きてる!でも布団から出られないよ〜。」
情けない気持ちで言うと、襖越しに笑い声が聞こえた。
光忠「そう思って、火鉢の準備してきたんだよ。」
月海「火鉢?!」
入るよと、声が掛かり箱を抱えた光忠が入ってきた。