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人魚姫ストラテジー【HxH】【裏】

第16章 研究と私


母の声が会場に響き、盛大な拍手が送られる。
ルルは不安そうに隣の母を見上げた。
「《夢想叶書》がわたくしの代でより本格的になったことを、娘のルルで公的な試験を行います。」
「…え?」
「お相手は、アンデルサイン伯爵のご子息クリスチャン様でございます。」
「…………。」

わたくしは、お母様の何なのですか?

そんな疑問が心で痼りになっていくのがわかる。
今まで何の為に生きていたのかわからない。
自分はただの人形。母の言いなりになり、母に言われるがままの生活を送る。
何一つとして不自由はなかったが、何一つとして自由が許されなかった。
何事に興味を抱かないようにされていたのは、母の唯一の優しさだろう。
ルルは知っていた。
あの本に自分の名前と相手の名前を書くと、どんな境遇でもお互い深く結ばれあう。
代わりに、「代償」と今までの記憶すべてを捧げなければならない。
今までの記憶全て?そんなもの、あって、無いに等しい。
自分の人生は母の為にあるのだから。
「ルル、ご子息のお名前を書いてさしあげなさい。
ママの期待を裏切る子じゃないでしょ?あなたは。」
嗚呼、こんな時に今まで欲しかった言葉。
相手まで決まっていて、どういうことだろうか。
幼い自分だったけど、初めて恋をした人と結ばれたいと思ってしまった。
こんな時まで母の期待を裏切る自分はいけない子。
母には最後まで私はただの人形だった。
でも、譲れない物があった。
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