第5章 【神宮寺レン】新しい居場所
自分の元を離れていった彼女の後ろ姿を見て、薔薇は目を伏せた。
いつかは離れていくもの、分かっていた。分かっていたはずなのに、涙がこぼれた。
彼女も女性だ、ちゃんとした男の人がいいのだろう。
仕方ない、仕方ないんだ。
分かっている。分かっている、のに…。
「っう…」
胸元を抑えて蹲る。
やっぱり、寂しかった。
高校に入学してすぐ出会った彼女。
自分を失い精神を患った自分を懸命に支えてくれて、早乙女学園にまでついてきてくれた。
優しくて明るかったけど、その裏にある闇も、私は知っていた。
その闇も振り切って、彼女は自立した。
私もいつまでも彼女に頼っていられない。
自立しなくては。
そう思い続けて立ち直ったのは、1ヶ月後。
彼女の背を見ては、幸せならそれでいいやと思えるようになった。
だって、私は━━
「薔薇」
名を呼ばれ、顔を上げる。
夕空のようなオレンジ色の髪色の彼が、手を差し出す。
私はその手に自分の手を重ねることなく、空いている胸元に入り込んだ。
彼はくすりと笑う。
「ハニーは甘えん坊さんだね」
抱き締め返してくれる腕。
私は、新しい居場所を見つけた。