• テキストサイズ

(R18) Lv.5 (HQ)

第3章  Lv.12



 結局、インターホンを鳴らして彼に出迎えてもらって今に至る。

「近所迷惑な声出してんじゃねえ!」
 そう私を叱った彼もいい感じに大声だったけれど、言うと後が怖いので黙っておくことにして。


「えっと、その、……ごめんなさい」


 敷居をまたぐ前に静々と頭を垂れた。
 玄関を一段上がったところにいる彼がハァ、と小さな溜息を漏らす。


「反省は」
「……してます」

「自衛は」
「……ちゃんとします」

「ダンサーたる者」
「……身体大事に、です」


 まるでお父さんのようだと思う。いや、お母さんか。玄関先でこんな風に叱られるのは数年振りだ。

「次やったら詰めっからな」
 まだ些かムスッとしてるし言ってることめっちゃ物騒だけど、しかし入室は許可してくれた彼。

 リビングへと戻っていく背中が「一応女なんだから本当に気を付けろよ」とごちている。

 女、って、思ってくれてるんだ。

 ひとり残った玄関に腰を下ろし、靴を脱ぎながら火照る頰。嬉しいと、素直に思う。一応は非常に余計だけれども。


「──ああ、そうだ、おい芋」


 そんなときだ。
 鉄朗さんの声が再度聞こえた。

 相変わらず私を芋と呼ぶ、彼の声。

 女性枠にカテゴライズしてもらえたことに心弾んでいた私は、緩んだままの頰で振りかえった。

 視線が、彼の微笑を捕らえて。




「おかえり」





 緩みっぱなしの頰が。
 朝の空気で冷えたはずの体が。
 淡く、疼きだした心が。

 一緒くたになってボンッ!と、火を噴いたように熱をあげる。


「たっ、ただ、……っ」

 ビックリして息が詰まって。
 気恥ずかしくて、嬉しくて。

「……──ただいま」


 呟いたら胸が、ほくりと温かい。

/ 41ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp