第12章 傷口を抉る。そして…
「俺にしとけ」
烏養さんがそう言う。
私を抱き締めたまま。
ううん。
抱き締めるなんてもんじゃなくて、
痛いくらい、
ぎゅうぎゅうに、
抱きすくめられている。
「…あの」
「忘れたいなら、忘れさせてやる。この前みたいに誰でもいい様な事すんな」
「…なんで?」
「ほっとけねぇから」
「でも…」
「うるせーよ」
いいのだろうか?
私は流されていいのだろうか?
よくわからない。
そもそも、烏養さんが?
なんで?
でも…
でも…
「顔上げろよ」
そう言われて顔上げれば、
身体だけでなく目線まで捕らえられる。
目をそらすことは許さないと…。
「俺にしとけよ」
もう一度言われたその言葉に、
私は、コクリと頷いてしまった。