第4章 愛する人に別れを
お別れパーティーの前日の夜、アランは家を抜け出すと森の近くまで来ていた。
一人になって気持ちを整理したかったからだ。
「アラン……」
突然名前を呼ばれ振り返ると、そこにはいつかのようにティキが木に寄りかかっていた。
「ティキさん……」
「……ここから……出ていくのか?」
アランは一瞬唇をギュッと噛むと、口を開いた。
「はい……」
「……そうか……」
ティキはそれだけ言うとアランの前から姿を消そうとした。
アランはしばらくその背中を見つめていたが、耐えきれずティキを追いかけ、思い切り背中に抱きついた。
ティキは驚いたように振り返るとアランを見つめた。
「本当は、っ本当はずっとこの街にいたかった……です!っでも……!」
「アラン……」
「絶対……ここへ戻ってきて見せます……だから」
続きが言えなかったのはティキに唇を塞がれていたから……。
「お前のことを……本当に愛してる……。こんな感情初めてでどうしたらいいかわかんねぇんだ……」
「っ私も、ティキさんのことが、大好きです、愛してます……!」
アランがそういうと、ティキは思い切り抱きしめた。
「アラン……俺はお前がどこへ行こうと必ず見つけてみせる。だから……お前の温もりを、香りを、すべてを忘れないように……俺のすべてにお前を刻ませてくれ……」
アランは驚いて目を見開くとティキのことを見つめた。
「ダメか……?」
「……私なんかでいいんですか……?」
「お前じゃなきゃダメなんだ……」
ティキはそういうと再びアランに口付けた。
アランはそれを受け止め、夜空の下何度も口付けを交わした。
やがて、お互いの合図でゆっくりと立ち上がると、街のハズレにある、男達が休憩の合間に使っている小屋に向かった。
小屋の中には簡素なベッドとランプ、そして暖炉があった。
「寒いだろ?今火をつけるから待ってろ」
ティキはすぐに暖炉に火をつけた。
すると暗かった部屋の中がほのかに明るくなった。
ランプもつけようとしたが、それをアランが止めた。
「ランプは……恥ずかしいのでつけないでください……」
「わかった」