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互換性パラノイア【TOA】【裏】

第64章 【番外編】聖夜祭


世間は聖夜祭が近く、賑やかで、町の明かりは暖かくて、とてもしんみりとした。
実はあまりこういうお祭りにうとかった私は、何をするのかよく知らなかった。
雑誌や本を読んで、大切な家族と、恋人と過ごして、プレゼントを贈り、料理を楽しむとあった。
いつもより高い食品でケーキを作り、プレゼントを用意して、暖炉をつけて部屋で彼の帰りを待っていた。
今日は町の警備があるから帰りが遅くなるのは聞いていたが、せっかく初めて二人で過ごす聖夜祭なので、と私も眠らずに待つ約束をした。
窓を見ると、ハラハラと雪が降り始める。
こちらでは積もることはそんなにないと聞いたが、地面に落ちては水へと変わってしまう雪を見るのは切なかった。
フェンスに積もる雪はそのまま残り、バルコニーも少しだけ積もりそうだった。
どちらにせよ、寒い夜だった。
ジェイドさんもお仕事で冷えすぎないといいけど…。

ボーンと時計がまた1つ鳴る。
城の灯りは、とうとう自室しか付いていない。
他のメイドさんたちも休暇を取ってしまっているし、城に残っているものはほんの僅かだろう。
料理を温め直そうと、厨房へと向かった。
ワゴンがカチャカチャ鳴り、リフトに自分と乗り、薄暗い厨房へと向かう。
すると、そこには人影があり、何かを作っているようだった。
シナモンスパイスの香りがする。
誰が何をしているのだろうかと、ゆっくり戸を開けると、愛しい後ろ姿が見えた。
「ルルさん?どうされたんですか?」
「あ、おかえりなさい…」
まだ外出用に羽織るコートを着たまま、小さなお鍋で香り豊かな何かを煮込んでいた。
「はい、ただいま。お待たせしてすみません。」
「いえ…、何をされてるんですか?」
「ホットワインを作っているんですよ。
夜遅くまで、身体を冷してルルさんが待っていると思って。
果物とスパイスとはちみつで甘めにしたので、ルルさんも飲めると思います。」
「あ!ありがとうございます!
私も今、お料理を温め直しに来たんです。」
「色々作って下さったんですか?
夕食もまともに取れなかったので、楽しみですよ。」
眩しいくらいの笑顔でそんなことを言われて、私はきゅんと胸が高鳴った。
スープを火にかけ、オーブンにお肉とお魚のメインを入れて温め直し、二人でワゴンで部屋まで運んだ。
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