どうやら私は死んだらしい。【HUNTER×HUNTER】
第8章 君の理由
サトツさんが、試験の開始を告げる。
ハンター試験は死の危険を伴うという前置きと共に、本試験への参加の意思確認が行われた。
「……当たり前の話だが、誰一人帰らねーな。ちょっとだけ期待したんだが」
レオリオが、辺りを見渡しながら言う。その表情からは、どこか緊張している様子が伺えた。
「じゃ、アンタが帰れば?」
「あぁ、悪いがそうさせてもらうぜ……って、誰がなるか!」
レオリオが、サキの提案にごく自然にノリツッコミをする。少なくとも私には、一朝一夕でできる芸当ではない。けれど彼が一巻で呼び捨てにされ激怒したことや、一般人と比べハンター試験を受ける程度に身体能力が高いということを鑑みるに、故郷でそうそうイジられていたとも考え辛い。と言うことはそう、つまり彼の生まれ持った芸人的素養が今開花しようとして──
「おかしいな」
クラピカがずっと先の方を見ながら言った。
『……ビックリした。読心術でも使われたかと思った』
『バカな考察してるからよ』
サキは私を白い目で見た後、先頭の方で起こるどよめきに意識を向けた。
「おやおや」
斜め後ろを歩くヒソカが、僅かに目を細めた。
徐々に、私達一団のすぐ前を歩く人の歩幅が変わる。歩調も変わる。
幾人かが、私達を早足で追い抜いてゆく。
「何だ?やけにみんな急いでねぇか?」
「やはり、進むペースが段々と速くなっている!」
「前の方(ほう)が走り出したみたいだよ!」
レオリオが呑気なことを言うので、クラピカとゴンは走るための身構えを取りつつ、彼にそう教えた。
「申し遅れましたが、私(わたくし)、一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内致します」