• テキストサイズ

【おそ松さん】─百叶蝶々─

第4章 願った事、叶えた事、願ってしまった事。






───7月の後半。


雨の降らない珍し過ぎる梅雨が過ぎ、蝉が鳴き始める。



蒸し暑い教室。



つまらない授業は変わらず長い。






けれど、この頃変わってきた事がある。









「ねぇ、これ何て読むの。」



「馬鹿なの、貴方。」



「わり。」



「…………じあい。慈しむに愛で慈愛。」



「おー。流石は学年トップのスーパー転入生。」



「五月蠅い。前向け。暑苦しい。」








……隣の席の彼女が、周りに馴染み出した事。







それから、もう1つ。







「あ、じゃあさこれは──」


「カラ松君、教科書見せて貰っていい…?」


「ぁ、あぁ!どうぞ…。」


「ありがとう。……あつし君、貴方はカラ松君の次に頭いいのだから必要以上に訊くな。正直、うざい。」


「トド松君のお兄さんには笑うんだね。」


「……殴っていい?」










……あつし君とやらが、彼女に猛烈アタックをしてくる様になり、彼女はあの日以来、本の少しだけ、笑う様になった。




実際、仲直りはした。

友達とは違うと言った訳をちゃんと話す為に、彼女の家の前にいたら、痺れを切らした彼女がやっと会話をしてくれて。



可笑しな話、恋愛の感情を互いに持ってして友達になってしまっていた訳で。



俺自身、恋愛には疎い様で今だってまだわからない。



ただ、自覚したからか、前より遙の仕草や行動が目につく様になって、一緒に居ると恥ずかしくて、でも嬉しいなんて、変な感情が激しく現れる様になった。




彼女も、俺と気持ちは同じだったみたいで、取り合えず自分達がこの感情を本当に恋をしたからだと思えるまでは、まぁ、いつも通りで居ようとなった。




お互いに納得した関係。





友達じゃない、曖昧で歪な関係。






不思議な事に、前より心地いい関係だったりはするんだが……。









「何だかんだ、あつし君って呼んでくれるんだ?」



「嫌ならテメェにする?」



「急に口悪くなるのはトド松君譲り?」









───この、あつし君が何だか気にくわないのだ。









何か、馴れ馴れしい。







──後で、トド松に訊いてみようか。




/ 176ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp