【忍たま乱太郎】~空蝉物語~【兵庫水軍中心トリップ逆ハー】
第1章 兵庫水軍との邂逅
プロローグ
丑三つ時。
春も近づき少しずつ暖かくなってきたとはいえ、
四季変わらずこの時刻はずっと闇に包まれている。
周りの景色どころか自身の姿も視えないような宵闇の中。
なるべく音を立てないよう細心の注意を払いながら
小さな民家の引き戸からひょっこりとその人物は顔を覗かせた。
ずっと闇の中にいたおかげでうっすらと辺りが見え始めてきていた。
ここでの生活で見慣れた畑や井戸の位置を目で確認すると
後ろを振り返る。
奥の部屋では家主である老夫婦が規則正しい寝息を立てていた。
「……こんな形で出て行ってすいません。いずれまたー」
小声でそう言うと二人のいる方向に深く深くお辞儀し、人影は駆ける。
もう一度として振り返ることはなかった。