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十四郎の恋愛白書 1

第11章 No.11



「どぅえぇーーー‼︎⁉︎」

晴れ渡った空に、万事屋銀ちゃんから叫び声が響き、電線に停まってたスズメ達がパタパタと飛び立った。

万事屋の応接室で、声の主は椅子から転がり落ち、体勢も立て直せないまま口をパクパクさせていた。

「ほ、本当にこっちがゆきで、こっちが多串くん⁉︎」

オレ達を震える手で指差す銀髪野郎。

「あぁ」
「そうです」

見下しながら答えたゆき(中身オレ)と、モジモジと遠慮がちに答えたオレ(中身ゆき)に、万事屋はピシリ、とフリーズした。

そこへスパーン!と勢いよく襖が開く。

「うるさいアルーー‼︎」

枕を抱えたチャイナ登場だ。
ピンクのパジャマのボタンは一つずつ掛け間違えてあり、頭はスズメの尻尾のようにピョンピョン跳ねていてまだまだ幼い。

「今何時だと思ってるアルか!まだ8時アル!子供は寝てる時間アル!ゆきだけ置いて、マヨラーは帰るアル!」

寝惚け眼をゴシゴシ擦りながら騒ぐ。

「アホ、“もう”8時だ。世間様はとっくに動き出してんだよ。ぐうたらしてねぇで、さっさと起きやがれ」

ゆきの姿のオレの毒舌に、チャイナは寝惚け眼のままポカンとこちらを見る。そして再びゴシゴシ目を擦るとオレのところへ駆け寄ってきた。

「ゆき?どうしたアルか? 何か悪いモノでも食ったアルか?マヨラーにマヨネーズ一気飲みさせられたアルか?」
「“悪いモノを食う”が何で“マヨネーズ一気飲み”に繋がるんだ!マヨネーズは神が作った万能の食べ物なんだぞ!」

オレが反論すると、チャイナは「ひぃ!」と青ざめ、万事屋に縋り付いた。

「ぎ、銀ちゃん、ゆきが変アル!まるでマヨラーみたいな発言してるアル!マヨラー病にかかってるアル!」

そこへオレの姿のゆきが戸惑いながら声をかけた。

「神楽ちゃん、実は、私とトシさん、交通事故で中身が入れ替わってしまって…。今は私がゆきなの」

しばしの沈黙…。

「どぅえぇーーーー‼︎⁉︎」

再び万事屋に絶叫が響く。

枕をポトリと落として、オレ達を指差し、口をパクパクさせるチャイナ。
全く、ここの親子は反応まで同じだ。

「そんなの嫌アル!ゆきがこんなにガラ悪いなんて嫌アル!女言葉話すマヨラーなんて気持ち悪いアルー!!」
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