第29章 ~拾柶~GOOD-BYE
「よく此処にいるって判ったわね?場所の指定はしてなかったのに」
私が先程の戦いでウルキオラに向けた言葉――
"話があるの…来るまで待ってる"
「少し考えれば判る。無駄話はしたくない…用件はなんだ」
「……井上織姫はどこ?」
「どういう意味だ」
「違うの?断崖で会ったんでしょう?任務完了って言ってたからそうだと思ったんだけど」
「………お前…」
ウルキオラは表情こそ変わらないが内心驚いていた
その一言で此方の手の内を読む明晰さ。そして短時間で思惑に運ぶ策略の技術は藍染にもひけを取らなかった
「…それを知ったところでどうする」
「知りたかったのよ。織姫を拐うのはあの能力が欲しいから?」
「そうだ。あの力は藍染様の役に立つ。藍染様もそれをお望みだ」
「そう…どうしても返して貰えない?」
「取引ならもっとましな言い訳を考えろ…此方の手中にある以上もはや対等ではない」
「…ならもう一つ。何故私に手をかけないの?誰も傷一つすら付けようとしないわ」
「命令だからだ」
「命令ね…」
「そうだ。今はそれだけだがいずれお前も此方側に来る事になる…それまで現世を楽しむことだ」
ウルキオラは手を空中に翳して虚圏への道を開こうとした
「……取引しない?」
「言った筈だ。元より対等では無い」
「そちらにとってもいい話だと思うわ」
「…………」
ウルキオラは暫く私を見つめると手を下ろした