第9章 出会い
当然、友梨香は予想もしれなかっただろう。俺自身も予想外の行動だ。そのまま床に、友梨香は倒れ込んだ。
ザリリ、と渡り廊下の固いコンクリ床に、皮膚が擦れる嫌な音がする。
「…いった………」
僅かな間を置いて、小さくそう呟いた友梨香の声は、驚きが隠せていない様子だった。
自身の不可解な行動に頭が追いつかない。
謝るべきか。手を貸すべきか。いや、この女がいけないんだ。俺のま〜くんなのに、べたべたくっついたりするから。
色んな思考が混じって、身体が固まったまま動くことができない。
沈黙が流れて、友梨香が苛立ちの混じった深い溜息をつき、立ちあがろうとゆっくりと体勢を変えた。
露出した膝に、痛々しい擦り傷がついている。
その瞬間、立ち上る香り。
思考停止した時間が動き出す合図のように、俺の鼓動が急に速まった。
砂利が付いて灰色に汚れたそこからは、血が徐々に滲み、やがて溢れ、脛を伝って流れていく。
目が離せない。鼓動と共に、呼吸も荒くなっていく。
俺は、立ちあがろうとする友梨香の肩を掴み、それをつい制止してしまった。