第9章 出会い
コミュニケーション能力もないし、どの教科もできずテストの点は悪い。勿論運動神経も悪くてしょっ中転んでは怪我をしている。
そんな行動が目立って、ま〜くんだけでなく他の奴らも友梨香は何もかも自分で出来ない馬鹿で駄目な女だと思っているようだった。
しかし、近すぎずかといって遠すぎない距離で観察する立場にあった俺には今までの行動で気づいていた。友梨香がどれだけ賢しい女なのかを。
「嫌味とかじゃなくてさ、あんたって相当嫌な女だよね。」
夕日が射す渡り廊下で、偶然鉢合わせた友梨香は、珍しく一人だった。
学年が違う俺に見せつけるかのようにま〜くんの隣にへばりつく友梨香にここぞとばかりに話しかける。
友梨香は肘をつきながら校庭でサッカーに混ざるま〜くんを遠目から見ていたようで、そのまま視線を外さず何も言わない。
しかし、友梨香に取っても俺は邪魔者なのだろう。前のように興味がないような素振りではなく、明らかに敵意を持って無視をしているようだった。
今だったら揺さぶりも少しは効くのだろうか。
「ま〜くんにあんたの本性がばれたらどうなるだろうね。」
「…言うの?」
目を見てきたのも、答えが返ってきたのも大分久しぶりな気がする。
「へえ、意外と自信ないんだね。あんなに上手く騙せてるのに。」
ま〜くんは自分より俺の言葉を信じると思っての彼女の焦りが目に見える。
強気だった友梨香の眼光から、反撃は覚悟していた。けれど、反撃どころかその目からはみるみると生気が抜け、会って間も無い時の空っぽのような眼差しに俺を映した。
「ないよ、自信なんて。いつだって。」
それは、角も、棘もないまるで球体のような声音だった。
俺は拍子抜けしたと同時に、初対面の時の気味の悪さを思い出した。
背を向けて歩き出そうとする友梨香。
身震いと共に何故か怒りが湧いてきて、柄にもなく目の前の女子を突き飛ばした。