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第4章 弥太郎河童


小さな小さな女童子が水に呑まれた。

恵み豊かで里を潤す悠々たる川。

そんな川でもひとたび雨の強く打ち振る恵みを受ければ、荒ぶる水槌の轟々とした大鉄砲を撃ち放つ。

土手筋に図々しく繁茂する畑の作物、中洲に慣れた様子で根を張る水気の多い馴染みの樹草、何処からか流れ着き見かけぬ花実を結んだ健気な新参者、魚、虫、蚯蚓、蛇、獣、みな隔てなく押し流されて行く。
里でさえ人でさえ、時には都でさえも。

弥太郎が助けたのは、そんな水槌へいわゆる"神意"とか言う戯言に強いられて嵌まり込んだ女童子だった。

何で助けたかって?

簡単な事。

弥太郎には、鉄砲水の瀬に乗ったその女童子が、凄く、凄く、旨そうに見えたのだ。
胡瓜より餅より尻コ玉より、真桑瓜よか冷や酒よりか、揉みくちゃになって流れて行く女童子が涎で溺れかねないくらい旨そうだったから、だから弥太郎は鉄砲水の上ッ辺りに躍り出たのだ。


まだ皿は痛かなかった。手の指だって、欠けちゃなかった。

ただ腹が鳴るばかり。


ぐうぐうと。

チリ、チチ。











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