• テキストサイズ

楽天地

第11章 斎児ーいわいこー



それは、恐らくない。
会ったばかりで大してムレを知らない私にすらわかることだ。路六に無茶な話だと分からない筈がない。

「…もしかしたら…なんてのは、あのムレにかかっちゃ、ねぇ、かな…?うーん…」

歯切れ悪く呟いた路六が、喉を鳴らして唸る。ほら見ろ、やっぱり分かっているじゃないか。

「俺が連れてっちゃ角が立ちすぎんだよなぁ…。何とかなんねぇもんかなぁ」

首を捻る路六の肩越しに不意に景色が拓けた。野っ原が広々と繁みを風に揺らしている。青々と繁る葉先の尖ったこの草は初夏(はつなつ)の薄だ。
薄の野っ原の真ん中に、小さな祠が見えた。小体で古びてはいるが見るからに清げで、何というか、きっちりと美しい祠だ。

それにしても。

ここは見覚えがある。
つい昨日見た場所だ。そのときは薄の穂が白々と光っていた。

口を開けてぽかんとする私の肩を、路六がぽんと叩いた。

「お疲れさん。着いたぜ」


















/ 296ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp