第1章 甘いものがあったからとりあえず口に入れてみた
「カフェラテちょーだい」
氷が少し残ったグラスの口を持ってカラカラと振りおかわりを要求するのは僕の恋人桂木優樹。
人の家に来て飲み物を頼むにしては大きな態度を取っていて、何より物凄く機嫌が悪い。
(また両親と喧嘩したんだ……)
「ウチは家出の駆込み寺でも、そこいらのカフェでもないんだけど?」
僕は目の前にオーダーされたカフェラテと小洒落たパッケージのチョコレートを置いて優樹の隣に座った。
「だって仕方ないじゃん!家には居れないし、猫丸のトコ来るしかないじゃん!?」
チョコレートの包装を雑に剥がして口に放りこむ。
ろくに味合わず次のチョコレートに手を伸ばしたら猫丸にペシンと叩かれた。
「何すんだよ…」
「そればこっちのセリフだよ!コレ、〇〇の限定チョコなんだからもっと味わって食べてよ!」
「はぁ?チョコはチョコだろ?」
「……優樹には口の中でトロけるこのチョコの良さがわからないんだね……」
「俺は甘いもの食えりゃなんでもいいんだよ」
もう一つおくれ…と手の平を上に向けパタパタさせてチョコレートを催促。
「美味しく食べてくれない人にはあーげないっ」と、トロけるチョコを自分の口の中に入れ、その食感を楽しむ。
ん〜美味しいっ!と思わず頬を緩ませニンマリする。
「お前も俺をいぢめるのか?」
「いぢめないよぉ?」
「ぼのぼのか!?」
「シマリスくん?」
「………」
「………」
「………」
「……何があったの?」
一通りネタ合わせしてから猫丸は優樹をじっと見つめて家出の理由を聞いた。
「賞味期限ギリギリのクッキー食べたらキレられた」