第2章 【 一 】
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『…----------君にはね、守ってほしいんだ。"あの子"を。』
『…----------何たって、危なっかしい子だからね。』
『…----------だから、頼んだよ。…依。』
夢の中で、あの人はそう儚く笑っていて…。
「……自分勝手なんだから…。」
人任せに頼んで、勝手に死んで。
そよぐ風に揺れる髪を抑えながら、そう呟く。
もうこの世にはいない"偉大なあの人"が残したものは、今では"負の遺産"と呼ばれ、私の同僚も里の者も、ソレを確実に妬み嫌っている。
「…ホント、自分勝手。」
強く吹いた風によってかき消された言葉に、少しだけ自嘲が漏れる。
窓を閉め、忍服に腕を通し、額当てを手に取って 、私は家を出た。
小枝から覗く日差しは眩しく、視界に映る新緑が目に沁みる。
静まり返る此処は、里の街の様な朝の喧騒も活気も無く、ただ自然が息づくだけで、寂しい位の静寂が包んでいる。
だけど私は此処が好き、だから。
「…いってきます。」
"あの人"は決して、自分の"遺産"を守ってくれとは言わなかった。
その"遺産"を守る小さな"彼"を守ってほしいと、私に託した。
その言葉に少なからず疑問を抱いた自分は、今でも健在だ。
『…なんで、彼を?』
強く、自尊心もあり、ましてや私より年上なのに。
そう投げかけた私に、あの人は優しく笑いながら頭を撫でてくれたっけか。
『…いつか…きっともっと大きくなったら分かるよ。なんてたってあの子は弱い。君よりも、ずっとずっと…ね。』
『だから頼んだよ、依。』
そう言って、あの人は綺麗に微笑むから。
『…あの子を…----------"カカシ"の事を守ってやってくれ。』
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(始動)