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薔薇の小説家と赤葦君

第3章 3話


赤葦視点

ここに着いたのは、冬の学校帰りの日。たまたま、部活はオフで早く帰ろうとしていた。歩いていたら、なぜかたどり着いていたこの温室。もちろん、彼女はいた。
「いらっしゃい。寒かったでしょう? コーヒー、飲む?」
あ、はいと言った。さっ、座ってと椅子を引いた彼女は笑っていた。俺が座ると、ルンルンと効果音がつきそうなくらいに笑顔でマグカップを手に取った。マグカップにコーヒーを注ぐ彼女はなんだか手慣れていた。まるで、貴方の為に練習してきたと言うかのように。
もちろん初対面、だったさ。けど、薔薇の香りも彼女の姿も懐かしい。前、ずっと幼くて小さかったころに会ったような。
彼女はそっとアーガイル柄のコースターを敷いて、どうぞって言って、アンティーク物のマグカップを置いた。湯気がモクモクとたつ。向かいには色違いのコースターに乗った、色違いのマグカップがあった。
彼女はゆっくりしていってねと言い、古びたアンティーク物の万年筆を握った。俺は言われるがままで、ゆっくりとしていた。
小一時間ほどたって、俺、そろそろ帰りますと言ったら、彼女はまた来てね、と微笑み、ドアを開けてくれた。
それが、初めて温室に訪れた時の話。
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