第1章 導入
「じゃあ松野くん、をよろしく頼む」
でっぷりと貫禄のある男は、家の前で1人の女性を名残惜しそうに見ながら家長とその家族へと頭を下げた。
女性も名残惜しそうに男の背中を見送った。
これが松野家と の同居生活の始まりだった。
私と会長の関係は親戚、父の弟が会長、以後叔父さんと呼ぼう。
私は両親の関心を多く得ることができず、私自身も両親への関心が薄い家庭に育った。
そのため、放置子状態で育ち、情緒や性格に難があると判断した叔父さんが中学生になるころから色々な場所や、人を見る機会を与えてくれ、ある程度の常識を身に着けるようになった。
がしかし、いかんせん一般社会に飛び込んだことがない。
私から叔父さんにその機会を願い出たのだ。
ここは松野家
優しそうな夫婦と、六人の息子が住む赤塚市にある一軒家。
この話は私と、同じ年頃の六つ子との同居生活の記録である。