第8章 夏の始まりと合宿と…
もうこんな時間・・・
いつもなら、入浴後のタオルを洗って干し終えてから斎藤先輩と星を見て・・・もう部屋へ戻って消灯を待っている時間なのだけど。
今日は・・・男子部員の部屋がやけに騒がしくて、夢主(妹)ちゃんと夢主(姉)先輩と覗きに行ったらば、枕投げ大会に参加してしまった。
枕を全力で投げる意外な斎藤先輩の姿を見られて、楽しかったのだけど・・・
夢主(姉)先輩のことを目で追うように見ていた斎藤先輩の様子が気になって、楽しかったはずなのにもやもやしてしまう。
原田先生と枕を投げ合う夢主(姉)先輩を、とても優しい表情で見つめてた。
斎藤先輩の視線の先にはずっとずっと夢主(姉)先輩がいるのではないか…と怖くなって、斎藤先輩を見るのが怖くなったほど。
でも、枕投げのチームを斎藤先輩と組むことになって、枕が私に当たらないようにと、やっぱり私にもとても優しいものだから、ドキドキが止まらなかった自分が悔しい。
あぁ…もう消灯までわずかしか時間が残ってない。
斎藤先輩は来ているのかな?
でも、約束をしているわけではないし・・・
いなかったら、今日はかなり落ち込んでしまいそうで怖い。
行くのをやめてしまおうかな。
でも今日は良く晴れていたから、きっと星が綺麗なはず。
期待をしないようにしないようにと心の中で呟きながら、中庭へと向かった。
お庭をのぞくと、斎藤先輩が一人静かに空を見上げていた。
ああ・・・よかった。
ほっと、胸を撫で下ろして、斎藤先輩に声をかける。
私の声に振り向いた斎藤先輩は、月明かりに照らされてとても綺麗で、思わず見とれてしまったのだけど、それに気がつかれないように小走りでお隣まで行く。
空を見上げれば・・・ここへ来てから、一番の星空だった。
うわぁ!
思わずそう呟いてしまうほど、とてもとても綺麗な空。
ふと視線を感じて、斎藤先輩を見上げると、斎藤先輩の掌が私の頬に触れた。