第8章 夏の始まりと合宿と…
合宿生活も、今日が最後の夜。
なんだかあっという間だったな…
食事の準備に追われて、お稽古場へ行く事は全然なかった。
一度だけ、夢主(姉)先輩と覗きに行ったのだけど。
その時にちらりと見た斎藤先輩は、やっぱり綺麗でかっこよくて…その後ドキドキが止まらなくて大変だった。
それは、原田先生の様子を見た夢主(姉)先輩も同じだったみたいで、キッチンに戻ってから二人して少し挙動がしばらくおかしかった。
そんなことも楽しくて…
お風呂だって、夢主(妹)ちゃんと夢主(姉)先輩と三人で入って、寝る時も三人一緒で…
食事中は、部員の皆さんがほんとに元気で…
平助君と新八先生が毎回土方先生に怒られていて、賑やかで楽しい時間だった。
今日でおしまいなのが少し寂しい。
それに…
初日に斎藤先輩と星空を見てから、あの時間に斎藤先輩は必ず来てくれた。
昨日は雲っていて、星は見えなかったけれど…
「月と星が見えないとこんなにも暗いのだな。」
なんて斎藤先輩が言うものだから、星空ではないのに、斎藤先輩と見る空は綺麗に思えた。
今日は星見えるかな?
見えるといいな。
そんなことを考えながら、玉葱を切っていたら…
「いたっ」
指を少し切ってしまった。
我ながら間抜けすぎる。
「千鶴ちゃん大丈夫!?とりあえず早く水で洗って消毒しなくちゃ!」
そう言って、夢主(姉)先輩は消毒液を探しに行ってくれた。
「あ~…消毒液ないや…千鶴ちゃんごめん。お稽古場まで行って、先生に消毒してもらって。」
ついでに一君の姿でも見て元気出して!準備はあと少しだし気にしなくていいから、と、夢主(姉)先輩は優しく言ってくれた。
はぁ…自分の注意力のなさに本当に情けなくなる。
あと少しだと言ってくれたけど、まだ切っていない玉葱だって沢山あるのに…
とぼとぼと歩きながら、自己嫌悪に浸った。