第8章 夏の始まりと合宿と…
私はぎゅっと自分の手に力を入れると、あははは、と笑う沖田先輩の前に出て…
沖田先輩の手をとって、ぎゅっと握った。
そして、目をぎゅっとつぶってから、
「せ、先輩が擦り傷作ったら、わたしがっ…早く治りますようにって、お日様描きますから…えと…あの…か、描かせてください…ね?」
もう、最後の方は、声が小さくなってしまって、聞こえたかどうかわからないけど…
ちゃんと言えたかな。
すると、あはは、と笑っていた声はぴたりと止まって…
私に視線が注がれてるのがわかる。
手を握ってしまったし、沖田先輩はひいてしまったのかもしれない。
表情を見るのが怖くて、目をつぶったまま下を向いていた私のおでこに、
チュ
と、唇が軽く触れた。
驚いて目を開けて、目の前の沖田先輩を見れば、優しい笑顔で私を見てる。
「ありがとう」
どこか泣きそうにも見えるその表情に、何も言えないまま固まっていると、
「あはは。夢主(妹)ちゃん、真っ赤だよ。過去最高記録かな。」
なんて、沖田先輩はまたもや私をからかいはじめた。
そんな沖田先輩に、
「もう知らないっ!!!」
と、言い捨てて、私は部屋まで走った。
恥ずかしくって、悔しくって、うれしくって…顔が熱い。
沖田先輩が好き。
もういっそのこと伝えた方がいいのかな…
でも…笑われちゃったら嫌だな…
沖田先輩。
私の気持ちを伝えても、笑わないで聞いてくれますか?
キスをされたおでこが熱くて、私は眠ることができなかった。