第8章 夏の始まりと合宿と…
二人で立つのがいっぱいいっぱいの狭いキッチンで、夢主(姉)先輩と二人…目の前にある食材達と格闘している。
「コンロふたつとか…30人前どうやって作れって言うんだろ…」
夢主(姉)先輩はさっきからひたすらじゃがいもの皮を剥いているのだけれど、そのスピードが早くて早くて、思わず見とれてしまう。
今日から合宿がはじまった。
お昼過ぎにこの合宿所について、皆さんはお稽古へ…私と夢主(姉)先輩は、すぐに夕飯の支度を始めた。
30人前なんて、作ったことも見たこともないし、まだ要領が掴めない私達は、とにかくひたすら下ごしらえをすることにした。
「あついね~」
合宿中は、他の学校の生徒もいるから、基本的に校名の入ったTシャツとジャージで過ごすことになっているのだけど…
「ねえ…千鶴ちゃんさ…そのジャージじゃ暑くない?」
夢主(姉)先輩は、ジャージを膝上…というかショートパンツ?ホットパンツ?のような短さに切ってしまっていて、
「夢主(姉)…おめぇ…ジャージ切るなっつったろうが!ここに合宿するのはうちの生徒だけじゃねえんだよ!少しはいろいろ自覚しやがれ!」
って、早速土方先生にものすごい剣幕で怒鳴られてた。
「いえ…だ、大丈夫です。」
夢主(姉)先輩くらい短かくしちゃえば、動きやすそうだし、涼しいだろうなぁ…なんて思うけれど、土方先生に怒鳴られるのは怖いからやめておく。
キッチンは風通しが悪くて、本当に暑かった。
「だめだ…限界…」
20個くらいあったじゃがいもをきれいに剥き終わった夢主(姉)先輩は、にんじんに取り掛かっていた。
ちょっと待っててね、と立ち上がると、そのままキッチンから出て行ってしまった。
どうしたのだろう?お手洗いかな?
なんて思っていれば、
「雪村」
背後から斎藤先輩の声がした。