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白いカーネーション

第1章 ◎出会い


「多分サイズ合うはずなんだけど
 こいつ無駄にスタイルいいから。」


「無駄には余計だろ。」



いつも羨ましく思う。
兄弟でこんなに仲いいなんて。
家の弟なんか、
まるで腫物扱うみたいで。


自然とため息が出て
俯く姿勢をとった。



「ありがとう。
 波留ちゃんも着替えよ。」


「あ、そうそう。
 これ、波留のね。
 向こうに海水浴用の更衣室あるから!
 タオルで体拭いて。」


着替えとバスタオルを受け取ると
伊野尾さんと並んで
少し先の更衣室に向かった。



「あ、そうだ。
 波留ちゃんも
 俺のこと下の名前で呼んでよ。
 堅苦しいしさ。」



まただ。
また、あの笑顔を浮かべる。


言おうかな。
さっきの答え。
別に、今日だけの出会いだろうし、
言ったところで
この状況が変わるわけでもない。



「居場所を探してるんです。」



「へ…?」


「さっきの答えです。
 家にも学校にも居場所なくて
 生きてる意味もわからなくて。」



更衣室に着き
ドアノブに手を掛けた。


「だから、
 私が生きてもいい場所を
 こうやって外に出て探してるんです。」



伊野尾…、慧さんの顔
見るのがすごく怖くなった。
だから振り向きもしないで
急いで更衣室へと入った。


「何言ってるんだろう…っ。」


高鳴る心臓に両手を当てて
落ち着くまでしゃがみ込んだ。
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