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【薄桜鬼 トリップ】さくら玉

第6章 1864年ー文久四年・元治元年ー【中期】


「苗字君!す、す、好きだ!!」

「…へ?」

え、す、好き?!ま、マズイ!女ってばれてる?!

「こ、今夜、お主の部屋へ行ってもよいか?!」

「へ、部屋?!」

ちょ、マズイマズイ色々まずい!

そりゃ告られることなんてほぼない私としては若干嬉しくなもないけど…

「あ、あの、私の性別…」

ばれちゃったの?

そう聞こうとしたとき。

「君が男でも関係ないんだ!」

良かった!ばれてない!

……

…ん?ばれてない?

「えええー!!!」










それが一番最初。

それからと言うもの、事ある毎に何故か隊士の人に告られる。

一回はマジで襲われそうになり、ボッコボコにしてしまった。

男装がばれた訳ではない。

そう。

皆、男だと信じて疑わずに言ってくるのだ。

「…複雑すぎる!」

「何がだ?」

さっき、もう何人目かわからないけどまーた告られた日の午後。

思わず呟いてしまった私の言葉に土方さんが反応した。

「い、いえ…何でもないです。」

言える訳がない。

女としてなんか微妙すぎる。

変なプライドが邪魔して、これまで一度も誰にも相談したことがない。

お姉ちゃんには言ったけど、大爆笑された。

「いや、あんたたまに凄い美少年だもの。」

腹筋が割れると言って笑い転げながらお姉ちゃんに言われた事が効いている。

「ああ、そういやさっき隊士の誰かに呼ばれてたな。何だったんだ?」

「うぇっ?いや、何でもないっですっ」

「わざわざ呼びつけて何でもねぇってことはねぇだろ。…何を隠してやがる。」

いつの間にか土方さんの中で事が大きくなってしまったようだ。

いつもの眉間の皺がますます深くなっている。

「ちょ…!何でもないっていうのはたいした話じゃないって意味で、そんな大げさな事じゃないです!」

「大した事じゃねぇなら言えんだろうが。言え!」

「いや、それは…」

私の女の子としてのプライドと、相手の隊士さんの気持ちに対する罪悪感とでますます口篭る私に、土方さんのイライラは本日最高潮に達した。
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