第11章 恋
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「レナ…やっと見つけたぜ…」
そう言って近づいてきたのは、短い黒髪の、背の高い男だった。
レナは逃げようとするが身体が思うように動かない。
男がレナに手を伸ばすー…
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「ハァ…ハァ…」
レナはベッドの上で身体を起こした。
少し離れたベッドでは、ナミとロビンが眠っていた。
(…嫌な夢…そういえば前にもこんな夢見たような…)
レナは再び眠ろうと目を瞑ったがなかなか寝付けず、水を飲もうとキッチンへと向かった。
キッチンからは灯りが漏れていた。
時間も遅かったので、消し忘れかと思い中に入るとサンジが翌日の下ごしらえをしていた。
「あ……遅くまで…お疲れさま」
調理補助を拒否されて以来、サンジとはあまり話をすることがなかった。
キッチンで2人きりという状況はレナにとってかなり気まずく、早くこの場を離れたかった。
「レナちゃん……どうしたの?顔色悪いけど…」
サンジが心配そうな顔でそう言った。
「ちょっと嫌な夢見ちゃって…喉渇いたし水でも飲もうかなって思って…」
「そう……大丈夫?………よかったら…ホットミルクでも……入れようか?」
恐る恐る、といった感じでサンジがきいてくれた。
「…あ…うん、それじゃあお願いしようかな…」
同じ船のクルーとして、サンジと気まずいままというのは嫌だったので、お言葉に甘えてホットミルクを入れてもらうことにした。
何よりサンジには嫌われていると思っていたので、気遣いが嬉しかった。
「はい、どうぞ」
テーブルに着いて間も無く、ホットミルクがレナの前に置かれた。
「ありがとう、サンジ」
そしてサンジは再び、下ごしらえに取り掛かった。
「最近体調は…どう?」
レナに背を向けたまま、サンジが尋ねた。
「体調はすごく良いよ。…記憶は戻らないけどね」
このとき、腹を割って話せばサンジと仲良くなれるのではないかという考えが、レナの中に浮かんだ。
ゾロが本音を話してくれて嬉しかったように、サンジにも本音を話せば、この先気まずい空気が流れないような関係にはなれるのではないか…そう思い、レナは口を開いた。