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君が笑う、その時まで

第8章 お手伝い


 中ではバスケ部の練習が行われていた。

「あれ、伊織ちゃん?」

「あ、森山さん」

 体育館の入り口で顔を覗かせていると、森山さんが気付いて私に駆け寄ってきた。そして私の両手を握り、うっとりとした表情で私を見つめた。

「今日はどうしたの?もしかして俺の試合見に来てくれたの?俺、今日は伊織ちゃんのために戦うから――」

「チームのために戦えっての!!」

 突如、森山さんの頭を別の手がスパンとはたいた。森山さんは咄嗟に頭を抱えたが、すぐに立ち直り背後を振り返った。

「なんだ。笠松か」

「伊織を困らせんな。てか、お前シュート練済んだのか?」

「まだだ。シュート練が終わるまで伊織ちゃんを放っておけるか」

「ドヤ顔で言うんじゃねぇ!さっさと終わらせてこい!!」

 再三笠松さんにどやされて森山さんはそそくさと練習へ戻っていった。それでも去り際に「伊織ちゃん、またね」とさりげなく声をかけたのはいかにも森山さんらしい気配りだった。
 森山さんがコートに戻ったのを見届けて、隣にいた笠松さんは息を整えた。

「悪かったな。急に来てほしいなんて言って」

「いいですよ。どーせあっしは暇人ですから」

 にししと笑うと笠松さんは息を吐き、私の頭をポンと撫でた。


「あんがとな」
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