第5章 朝から、する?
抱かれた腕に力がこもる。
景吾が私の肩に顔を埋めるように頭をもたげた。
「…そうかもな」
耳元で囁かれて背中がぞくぞくする。
馬鹿。
「若と鳳も心配してたぞ」
「そっか」
鏡を見据えて自分の顔を見つめる。
面白みのない人形みたいな顔。美しいというのはもっと感情豊かな人間味のある顔を言うのだと思う。カタチじゃない。
「ほら、景吾、学校行こう。私久しぶりにテニスしたいよ」
「仰せのままに、女王様」
ふふ、と景吾が鏡の私と目を合わせて笑う。
「じゃあ行くか」
眼鏡を渡されかけると、鏡の中の私がにっこりと笑う。
ホッとして鏡の前を離れると、景吾が複雑そうな顔をしていた。
頬に触れようと正面から手を伸ばすと、捕まえられてそのまま抱きしめられた。
「本当に何ともなくて良かった。あんまり俺の傍から離れるなよ」
「うん、ずっと景吾の傍にいるよ」
噛み合っていないと解っていながらもそう返事をすると、景吾が柔らかく笑った。
その顔に、弱いよ、私。
腕をまわし背中を撫でると景吾がピクリと反応する。
「お前…んんっ」
呆れ顔で言いかけた景吾の唇を、唇でふさいだ。
キスをするのに眼鏡は邪魔だ。かけた眼鏡を再度外して、病室の鍵を確認してから景吾の手を引いた。
驚いた顔をする景吾がかわいい。そんな隙だらけだと、他の女の子にキスされちゃうよ。
病室のベッドに追いやられ腰掛ける景吾。
どこにいてもその凜とした高貴さは失われないのね。
真っ直ぐ私を見つめるその瞳は私の弱点を簡単に見つけてしまうのだろう。
股がるようにベッドに押し倒すと、ようやく景吾が抵抗を見せた。
「おい、何朝から盛ってんだ」
起き上がろうとする景吾に上から力を入れて首筋にキスを落とした。
「んっ…」
ちゃんと抵抗すれば私なんて跳ね除けられるのに、そうはしない。
何も言わない私に観念したのか景吾が私の背中に腕を回した。
さっき私がしたみたいに、背中をそっと撫でられ、さっき景吾がしたみたいに、私の身体がピクリと反応した。
「いま、景吾が欲しいの」
アイスブルーの瞳を見据えて呟くようにいうと、景吾がニィと笑った。
「いくらでもくれてやるよ」
制服のスカート中に景吾の手が滑り込む。