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【テニスの王子様】王様と私【跡部景吾裏夢】

第4章 どこにも行かないで



「景吾…?」

目を開けて、自分が目を閉じていたことに気付く。

あれ?私寝てた?いつから?

景吾が死にそうな顔で私を覗き込んでいる。

「野薔薇…」

目の端に涙まで溜めて、今までで1番貴方らしくない表情をしている。

右手は握られているので、左手を伸ばす。あ、点滴が刺さっていた。

仕方なく右手を離し、戸惑う景吾の、目尻の涙を拭った。

「景吾…?キングが泣いちゃ、だめじゃん…」

頬に触れられ、景吾の手が気持ち良かった。

「バカ、誰が泣いてんだ。そうやってぼーっとしてるから、ボールなんざぶつけられるんだ」

何時もの余裕のある顔に戻った景吾を見て安心する。

え?私、ボールぶつけられたの?

「ボール?」

「ああ、部活中コートでメモ取ってたお前に、野球のボールをぶつけたバカがいたんだよ」

「野球ボール?」

「ああ、当たりどころが悪かったみたいでな、丸2日眠ってたんだぞ」

「2日!?」

起き上がろうとすると押さえつけられた。

「まだ動くな」

おでこに当てられた手がひんやりして気持ち良い。

景吾がナースコールを鳴らすと、看護師が目を文字取りハートになりそうな勢いで病室に飛んできた。

「良かったわ、目が、覚めたのね」

景吾を見て嬉しそうな顔をする看護師を睨みつけると、景吾がポンと私の頭を撫でた。

「すぐに先生を呼びますね」

看護師は再び走り去っていく。病院て走って良いわけ?

「そうカリカリすんな、俺はお前のもんだろ?」

「当たり前よ、冗談じゃないわ、あんなケバい女に盗られてたまるもんですか」

景吾はぷ、と笑って、また眉尻を少し下げて私の頬を撫でた。

「お前、殺されても死ななそうだな」

「景吾を残して死ぬわけないじゃん」

「ああ」

ぷりぷりしていると医者と看護師が病室に入ってきた。

「気分はどうですか」

「ええと、大丈夫、そうです」

点滴が不愉快だけど。

脈を確認され、うん、大丈夫そうだね、と優しそうな初老の意医師が笑う。

寝たままお礼を言うと、急に尿意に襲われた。

「起き上がって良いですか?」

察したのか医師が頷く。

景吾の手を借りてベッドから降りて、点滴が絡まないようにして立ち上がる。

思ったより足に力が入らず景吾に抱き付いてしまった。

「おい、大丈夫か」

少し低い心配した声に首を振った。
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