第5章 project:birth ※R-18
-馬鹿げている。
こんな実験に了承してしまった私もそうだし、
こんな実験を考えた財団もだし、了承したカインもだ。全部が馬鹿げている。
私は身支度を整えながら、悪態をついていた。
髪を梳き、化学繊維で出来たチューブトップで膝上丈の白いドレスを着る。
スカートを履くのなんて日本に住んでいた頃以来だ。
小学校の3年生頃までだっただろうか。
私の青白い顔にプロジェクトチームのメンバーがチークを塗る。他にも色々。
化粧なんかしたことが無い。アレルギー反応が出たらどうしてくれるのだろう。
「綺麗になったわよ」
仕上げに植物由来成分を含まない香水を、
私の手首にちょん、と付ける。
鏡を覗く。
私が私でないようで、気分が悪い。
「ちょっとトイレ行っていい?吐きたい気分」
「いいけど、メイクやり直しになるわよ」
全てはより交配の成功率を上げるため、という研究努力だ。
でもこんなもの、意味があるとは思えない。
「排卵誘発剤とベッドがあれば済む話じゃないの?」
「それと熱いシャワーね。……そんなに卑下しないで」
気分が悪い。
上着を羽織って化粧室を出ると、複数の男性職員が私を見た。
ニヤニヤ笑いながら、嫌なヤツが話しかけてくる。
「こういうの、君の国の言葉で馬子にも衣装って言うんだろう?」
「でしょうね」
他の職員も。
「今日のマコは最高に綺麗だな。SCPなんかには勿体ない。今からでも僕にしないか」
「やめて」
私への反応から、このプロジェクトに対する他の人間の態度がわかる。
キメラプロジェクトだの、メアリー・スープロジェクトだの、
そうやって揶揄してる連中がいるのは知っている。
全て馬鹿げている。そうハッキリ言えるけれど、
私は自分が高揚しているのを感じていた。
平凡で取得のない人間でしかない私でも、
何かを成し遂げられるかもしれない。
世界に何かを残せるかもしれない、という期待感。