第2章 研究員マコ・カミザワの手記2
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ファイルナンバーC‐320514-07
財団職員マコ・カミザワの手記2
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この財団に籍を置いて間もない私が、とあるプロジェクトの主要メンバーとして選ばれた。
とてつもない計画だ。
birthプロジェクト。
要は、人型SCPと人間の交配テストである。
成人様の外見、精神を有したsafe~Euclid(ユークリッド)の人型SCPへ、
18~32歳の男女、人種問わず、異性との性的接触のない標準的な、
心身ともに健康体な『被験者』を送り込む。
人道という概念をどこか遥か遠くへ捨て去ったような
異常な実験だと思う。
私は研究の一参加者ではなく、被験者。
つまりSCPとパートナーになる最初の人間として選ばれた。
プロジェクトがスタートすれば、私は外のあらゆる情報からシャットダウンされる。
その結果が成功でも失敗でも。
平凡な、私という人間が人類の役に立つのならば、と参加に了承した。
私が居なくなっても困る人はこの世にはいない。
家族には、私は死んだと告げられる。
元々、折り合いが悪かったとはいえあまりいい別れ方が出来なくて申し訳ないと少しは思う。
だけどこのご時世、いつまで生きていられるか分からないのだ。遅いか早いかの問題。
そんな人間は財団内に掃いて捨てるほど居るけれど、
ある程度は客観的で論理的に物事を整理できる
安定した人間でないとならない。
私はカウンセリング、心理テストの結果ギリギリで合格した。
しかしこんな実験、まともな人間が了承するのだろうか。
テストにはなにか手が加えられた気がしているが大きな問題では無いのだろう。
だけど、もしこれが成功すれば。
人類よりはるかに強靭な肉体と精神を持つ、SCPとの交配が成功すれば。
希望なのか新たな絶望なのかは分からないが。
明日、私は私と交配させられるSCPと初めて顔を合わせる。
極めて事務的に、簡潔に情報を与えて「出来るだけ」交配しやすいように
持っていくのが私の任務だ。
その為の研修やカウンセリングも受けさせられた。
上手くいくことを祈る。